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センターニュース No.22

親よりも長く生きられたら・・・

理事長 五十嵐教行

今年で20年を迎えた。私事で大変恐縮だが、母を亡くしてから過ぎ去った時間だ。先日、母の知人から「いくつになった?」と問われ、自分の年齢を答えた。そして驚いた。母が死んだときの年齢に近い自分がいたからだった。「もうそんな年齢になったのかあ・・・」とその知人は、私をながめてしみじみとそう言った。私にはその人の目が私を見ているのではなくて、私を通して母の姿を見ているかのように感じられた。

あと数年で、母が亡くなった時の年齢に達する。私は今のところ健康だから、きっと死ぬことなく生き続けて、「母の年齢」を追い越していくのではないかとのんきに予想している。そこで、のんきついでに母親よりも自分の方が長生きをしたらどうなるのだろうかとあれこれ考えてみた。

まず、息子である私の方が、写真の中にいる母よりも老けていくことになる。もしも私が母よりもずうっと長生きしてから死んだとしたら、あの世で母は私にどんなコトバをかけるだろうか。母が最後に見た私の顔、姿形は今から20年前のもの(すでに私の姿形は大きく変わってしまっている)なのだから、「その時」の私の外見の変わり様に驚くばかりか、ひょっとしたら受け入れられずに、こんな息子を生んだ覚えはないとか私の息子はこんな年寄りなんかじゃないと言いだす・・・。時間は人の姿をゆっくりと変えていくから、無理もないかと思ったりもする。

さて、そんな日が本当にやってくるだろうかとけっこう真剣に考えてみると、ゆかいな気分になる。自分よりもずっと若い母が、老いた私の手を引いてくれたり、ゴハンを食べさせてくれたり、お風呂に入れてくれたり・・・と想像してみたら、悪い気はしなかった。 母にならわがままも言えるし、何よりも羞恥心を感じることはないだろうなあと考えた。あの世では、若くして亡くなった親が長寿をまっとうした子どもの介護をしているというケースが増加していると問題になっていたりして・・・。

最後にもう一つ。あの世にも重力があればの話だけれども、もしもそうならあの世にも寝たきりの人は多いことになる。でも幽霊は浮いているから、浮きっぱなしの寝たきりとなってしまうのだろうか。

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