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センターニュース No.24

自分のコミュニケーションに左右される感情

理事長 五十嵐教行

先日、ホテルに宿泊した。インターネットで予約すると、ホテルから確認書がメールで届く。私は届いた確認書は印刷して当日持参することをしているのだが、基本的にはその確認書が必要になったことはない。それでも何かあった時のためにと持参している。

その時もいつものようにフロントでその印刷したものを提示しようとしたら、フロントマン(40代男性だと思う)は私の顔をチラリと見、すぐにパソコン画面に目をやり、「お名前教えてください」と言った。言われた私はフロントのカウンターにその紙を出して見せたら、画面から目を離さずにもう一度「お名前、教えてください」と語気を強めて言ったのだ。この人はなぜ私がカウンターに提示したこの紙を見ようとしないのか、なぜ私の顔を見ようとしないのか、そしてなぜ笑顔ではないのか、むしろ終始不機嫌そうな顔をしているのはなぜか、どうして私は彼の丁寧語による命令(あるいは指示とも言えるけれど、ここではあえて命令と言いたい)に従わなければならないのか、しかもそれらを我慢しなければならないのはなぜなのか(こんなことで目くじら立てるのは大人げないとも思ったからなおさら感じたのだけど)などなど、ほんのわずかな時間にこんなにもたくさんのことを考えてしまったのだ。だからほんの少し沈黙があって、「五十嵐です」と答えたことになったと思う。しかしフロントマンは画面から一度も顔を上げずに、つまり私の顔を見ずに「はい、五十嵐様ですね」とカチャカチャとパソコン操作をして、チェックインの手続きをそのまま続けた。支払いをカードで済ませるためにカードを渡すとカード読みとり機をカウンターに置いて「暗証番号を押してください」と言い始めた時に、ささやかな抵抗を試みた。彼がすべてのセリフを言い終わる前に「サインしますから」と語気を強めて言った。彼も自分のコトバがさえぎられていやな気分になったのだろう。私の顔を見ずにまたもや手続きをすすめてきた。

すべてが済んでエレベーターに乗って部屋へ向かった時に、たった今起こったことを考えてみた。彼の態度に私は腹を立てているのだ。きっかけは私が紙を提示した時に彼が目もくれなかった時だ。だから私は彼の表情や態度に注意を向けて、一つひとつ細かくチェックし、そしてその一つひとつに気分を害していき、私も自分の気持ちをストレートに表現した。手続きが済んだ頃には害した気分は自分の中で大きなものへと育ってしまった。大きく育てたのは、だれなのか?そう、答えは彼と自分。コミュニケーションの難しさがここにある。互いに育てている意識がないのに、結果として育ててしまう。

ところで、気分を害した私は夜食用に買っておいた大好物の折り寿司をすぐに食べ始めた。折り寿司は、私の気分を徐々に変えてくれた。ありがとう、お寿司くんたち!

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